文芸賞 受賞作品

文芸奨励賞

部門: 詩

表題: どこかで亀が泣いている

受賞者: 高知市 東谷晴男

耳たぶに指を添え 息をひそめ
ほんのちょっと 耳を傾けてみませんか
ほら 確かに 聞こえるでしょう
どこかで亀が泣いている その声が

あなたが皿を洗っている この今も
地球の裏側 表側
砂漠でも 山岳地でも 街路でも
ひっきりなしの 砲撃の音
空から 海から 陸地から
攻めあい へしあい 血を流しあい

魚のように 澄んだ眼で
この青い星が どうなっているか
目を逸らさずに 見て欲しい
海や 島や 陸地など
また その生き物たちに 襲いかかる
かつて覚えのない 暴風
丘を崩し 街を沼とする 大豪雨
氷河や 氷山 溶けては崩れる
限りなく暑くなっている この水の星

こんなとき 万物の霊長たるもの
憎みあい 殺しあいなど するときか

どこかで亀が泣いている
海の上の 大きな月を仰ぎながら
大粒の泪を 流しつづけている